滋賀県は、関西圏の中でも注目度の高いエリアの一つです。琵琶湖を中心とした自然環境に恵まれながらも、京都・大阪へのアクセスが良く、住環境としても人気が高まっています。そんな滋賀県で近年、投資家の間で関心を集めているのが「新築アパート投資」です。
不動産投資と聞くと、都市部の中古物件やマンションを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、地方都市では新築アパートという選択肢にも注目が集まっています。その理由の一つが、安定した「賃貸需要」の存在です。では、滋賀県ではどのような層がその賃貸需要を支えているのでしょうか。そのヒントとなるのが、県内に多く存在する「派遣会社」と「派遣社員」です。
滋賀県の産業構造と派遣労働の現状(具体企業事例)
滋賀県は製造業が盛んな地域で、草津市、守山市、彦根市、東近江市などには大手メーカーの工場や物流拠点が数多く立地しています。
たとえば、**東レ株式会社滋賀事業場(大津市)**では、高機能繊維や樹脂などの先端材料を製造しており、従業員は約2,000人以上在籍しています。工場の増設にともない、期間工や派遣社員の需要も拡大しています。
また、**株式会社村田製作所野洲事業所(野洲市)**では、セラミックコンデンサなどの電子部品を生産しており、敷地内の各工場では常時1,000人以上の従業員が勤務していると言われています。生産ラインは24時間稼働体制のため、日勤・夜勤シフトに対応できる労働力の確保が重要となっており、多くの派遣社員が活躍しています。
**日野自動車株式会社滋賀工場(蒲生郡)**では、主にエンジンの製造を行っており、トラックやバス向けの大型ディーゼルエンジンが中心です。年間10万台以上のエンジンを出荷しており、その製造には派遣社員や期間従業員の存在が欠かせません。
そのほか、**キリンビール滋賀工場(犬上郡)**では「一番搾り」などの主力商品を製造し、**日本電気硝子株式会社(大津市)**ではディスプレイ用ガラスや電子部品用ガラスの製造を行っています。これらの企業も繁忙期には派遣社員を積極的に登用しており、製造ラインの安定稼働を支えています。
このような製造業の発展にともない、県内には地元密着型の中小派遣会社から全国展開している大手派遣会社まで、約230社が活動しています。たとえば、株式会社ワールドインテック(栗東市営業所)やUTエイム株式会社、**株式会社グロップ(草津オフィス)**などは、滋賀県内の工場派遣に強みを持ち、企業と労働者をつなぐ橋渡し役を果たしています。
また、滋賀労働局の集計によると、滋賀県内の派遣社員数は2023年度時点で約13,000人と推定されており、前年比で約5%増加しています。これらの派遣社員の多くは、製造現場への短期から中長期の就労を目的とする「単身者」や「若年層」が中心です。
主要企業の概要(一覧表)
企業名 | 所在地 | 主な製品・事業 | 従業員数 | 派遣活用状況 |
---|---|---|---|---|
東レ株式会社 滋賀事業場 | 大津市 | 高機能繊維、樹脂等の先端材料 | 約2,000人以上 | 期間工・派遣社員多数 |
村田製作所 野洲事業所 | 野洲市 | セラミックコンデンサなど電子部品 | 約1,000人以上 | 交替制勤務に派遣活用 |
日野自動車 滋賀工場 | 蒲生郡 | 大型ディーゼルエンジン | 年間10万台以上製造 | 多数の派遣・期間社員 |
キリンビール 滋賀工場 | 犬上郡 | 一番搾りなどビール製造 | 非公開 | 繁忙期に派遣社員登用 |
日本電気硝子 | 大津市 | ディスプレイ用・電子部品用ガラス | 非公開 | 製造ラインで派遣活用 |
単身労働者による賃貸需要
このように、滋賀県には「単身で働く人」が一定数存在しており、彼らは勤務先の近くで住まいを必要としています。そのため、ワンルームや1Kといったコンパクトな賃貸物件に対する需要が根強くあります。
また、派遣社員の多くは自動車通勤を前提としているため、都市部の駅近物件よりも「工場まで車で10~15分」「駐車場付き」「家賃5~6万円程度」といった条件の物件が好まれる傾向です。実際、2024年4月時点での滋賀県内のワンルームアパートの平均家賃は約5.2万円で、近隣府県よりもコストパフォーマンスが高いという調査結果もあります。
こうした実情は、新築アパート投資を検討するうえで大きなヒントとなります。
新築アパート投資のメリットと注意点
滋賀県で新築アパート投資を行う大きなメリットは、「土地取得コストが比較的安いこと」と「明確なターゲット層が存在していること」です。都市部と比べて土地価格が抑えられているため、建築費を含めた総投資額を抑えやすく、利回りも高くなる傾向にあります。
たとえば、彦根市の郊外では、500㎡程度の土地が1,000万~1,500万円で購入できるケースもあり、そこに8~10戸ほどの木造アパート(1戸あたり20~25㎡、家賃5.5万円程度)を建てれば、満室時には月額収入40~55万円、年間収入にして480万~660万円を見込むことが可能です。建築費用は総額で5,000万円前後となるケースが多く、想定利回りは8~12%程度が目安となります。
また、派遣社員を主な入居者層とすることで、入居の回転はあるものの、一定の賃貸需要が見込めるという利点もあります。
ただし、当然ながらリスクもあります。派遣市場は景気の影響を受けやすく、派遣先の企業が採用数を減らせば、賃貸需要も一気に落ち込む可能性があります。さらに、派遣社員の多くは短期間の滞在を前提としているため、入退去が頻繁に発生し、物件の管理や原状回復に手間がかかる点も注意が必要です。
また、数年後に周辺エリアで同様の物件が増えた場合には、家賃の値下げ競争や空室リスクも考慮しなければなりません。そのため、土地選びの段階で「将来的な工業団地の開発計画」や「地域の雇用状況の変化」などをしっかりと調査しておくことが重要です。
派遣会社との連携が成功のカギ
滋賀県でのアパート投資を成功させるうえで重要なのが、「派遣会社との連携」です。多くの派遣会社は、自社の登録スタッフに対して住居を紹介する業務も行っており、オーナーと協力関係を築くことで空室リスクを大きく下げることができます。
具体的には、法人契約で複数戸を借り上げてもらったり、派遣スタッフの入退去に合わせて定期的に部屋を提供したりするような提携が可能です。実際、滋賀県内では派遣会社がオーナーに対して1年契約で5~6戸をまとめて借り上げるケースも報告されています。信頼できる管理会社を通じて派遣会社とつながることで、こうしたスキームを実現しやすくなります。
まとめ
滋賀県における派遣社員の存在とその住居ニーズは、新築アパート投資を考えるうえで非常に参考になります。製造業を支える派遣社員、その住まいを提供する賃貸住宅、そしてそれを運営する投資家。この3者のバランスを意識しながら、適切な立地や設備、家賃設定を行えば、安定した資産運用が実現できるでしょう。
地域の雇用動向と賃貸需要に目を向けることで、滋賀県は今後さらに魅力的な不動産投資エリアとして注目されていくと考えられます。